2009/5/23 映画『銀嶺の果て』とMy Old Kentucky Home

夜更かしして寝坊、8時半に起きる。
週末は2連続ニュースデスク勤務。
昨日の日記を書いていたら走る時間がなくなってしまう。
2日連続でジョグをサボる。
サボるとPodcastが聴けない。


…GAORAでビーチバレー中継を観る。
ヒロは面白くて仕方ないらしくずーと観ている。
ベスト8激突で好ゲーム、接戦が続く。
ドイツペアとブラジルのサルガド姉妹との対決は見応え十分。
美人揃いだし。
高尾和行さんという解説者がいい。
素人にも見所がわかるように手短に解説を入れてくれる。
加えて、トップ選手へプレイへの喝采、賞賛を忘れない。
どんなスポーツにも優れた宣教師がいるものだ。


…昨日、DVDで映画<span style="font-size:large;">『銀嶺の果て』</span>を観た。
見たい見たいと思ってなかなかチャンスがなかった。
東宝で黒沢明とともに助監督時代を過ごした谷口千吉という監督の作。
脚本が黒沢明、三船敏郎の映画デビュー作でもある。
敗戦の2年後の1947年公開。
銀行強盗の3人組(志村喬、三船敏郎、小杉義男)が警察に追われ雪山に追い込まれる。
追っ手が迫る。雪崩で一人を失った男たちは決死の北アルプス越えに挑む。

    


始まってしばらくは古ぼけた眠たい映画かな、と思って見ていた。
いつのまにか映画の世界に引き込まれて行く。
クライマックスでは目に力が入り涙腺がゆるみ、脱力して終わる。
これが映画だという雰囲気を持った映画でした。
映画の大部分が雪山のロケーション撮影。
1947年によくぞこんな映画を撮ったものだと思う。
というか、おそらく中途半端なセットより、あえてロケを選択したのだと思う。
厳冬の山という設定だが、実際の映像は早春の山。


若き三船敏郎が眩しいくらいにいい男。
とことん非情な悪党なのだが惚れ惚れするほど魅力にあふれている。
山小屋の少女を演じる若山セツコがいかにもこの時代の純真無垢な役柄。
どこかで見たなと思ったら卓球の福原愛にそっくりなのだ。


監督の谷口千吉は日本山岳会でならした山男だったらしい。
2007年没、つい2年前まで存命だった。
妻は八千草薫、50年連れ添ったおしどり夫婦だったという。
(谷口監督にとって3度目の結婚だった。二度目の妻は若山セツコ)


冬の雪山越え、斜面のトラバースで志村喬が滑落するシーンがある。
リアルな演出に思わず鳥肌が立つ。
僕ら夫婦も北アルプスの北穂高の斜面で滑落した経験がある。
今思い出してもぞっとするし、運が良かったのだと思う。
6月始め、まだ雪がべったりついた雪面。
午前中で雪面は固く滑りやすい。
アイゼンもつけず登山用のストックだけで涸沢へ下った。
最初に滑ったのは僕だった。
足を滑らせ滑落、すぐに腹ばいになりストックを雪面に突きスピードを緩めた。
すぐには止まらず、たまたま開いていた穴に運良く助けられた。
上から大丈夫、と声をかけるヒロ、が間髪を入れず足を滑らせた。
滑落防止姿勢を教えてなかったので頭を下にして無防備に滑ってくる。
体当たりで止めた。
同じ穴に落ちて助かった。
あのとき、少しでも落ちていくコースがずれていたら…と想像する。
何度も何度も思い出してぞっとする。
あの場所から傾斜の緩い雪原までは落差にして200メートル以上あっただろう。
良くて全身骨折、途中で露出した岩に激突すれば確実に死んでいただろう。
映画の滑落シーンを見て手のひらに汗をかいた。


音楽はのちに『ゴジラ』の音楽で一世を風靡する伊福部昭。
(伊福部の作ではないが)この『銀嶺の果て』の重要な場面で何度も流れる印象的な曲がある。
「マイ・オールド・ケンタッキー・ホーム(懐かしきケンタッキーの我が家)」
作曲はアメリカの代表的音楽家フォスター。
胸にしみる名曲なんだけど、残念なことにフライドチキンを思い出してしまう。


My Old Kentucky Home - The Robert Shaw Chorale

この映画の2年前までアメリカと日本は戦争という名の殺し合いをしていたのだ。
今とは時間の濃密さが違うんだろうな。
「あのころ、物事にはずっと張りつめた空気があった。
 日射しはずっと暖かかった。風は冷たく、犬はずっと賢かった。」(ランズデール「ダークライン」より)
昭和22年、この曲を映画のテーマに使ったことの価値を思う。


iTuneでいろんなバージョンの『懐かしきケンタッキーの我が家』を聞く。
しばし、フォスターの音楽世界に浸る。
♪ 懐かしき我が家に 夏の日来たれば (懐かしきケンタッキーの我が家)
♪ 吹けそよそよ吹け春風よ (春風)
♪ 空青く 山は緑 谷間に花咲き (峠の我が家)
♪ はるかなる スワニー河 (スワニー河)
♪ 競馬の始まりだ デューダ デューダ (草競馬)
♪ わたしゃアラバマから ルイジアナへ (おおスザンナ)


♪ 若き日 はや夢と過ぎ わが友 みな世を去りて
 あの世に楽しく眠り かすかに我を呼ぶ オールド・ブラック・ジョー 

『オールド・ブラック・ジョー』
久しぶりにこの歌を聴いた。
小学生の頃に持っていた愛唱歌集にこの歌が載っていた。
人生も折り返し点を過ぎるとこの歌詞は染みますね。
なんせ、わが友みな世を去りて我を呼ぶ、だもんね。


You-Tubeで見つけた『オールド・ブラック・ジョー』
トラップ・ファミリーとはあの「サウンド・オブ・ミュージック」の一家のこと。
  

フォスターではないが『赤い河の谷間』もいい。
♪ サボテンの花さいてる 砂と岩の西部
バンジョーの音が耳に心地いい。

 

…朝食前にヒロが、韓国の盧武鉉さんが死んだ、と言う。
(のむひょん と打ったら変換できたことに驚く)
朝、山登りをして落ちたのだという。
変な符合。
昨日見たDVDは韓国の『殺人の記憶』と山で人が死ぬ映画『銀嶺の果て』。
『殺人の記憶』当時の大統領は盧泰愚(のてう)だった。
だから? なんだけど。
前大統領の死…太陽政策の変更、収賄疑惑、ということは謀殺?


…ニュースデスク。
交流戦で中田翔が初打席初安打デビュー。
大相撲は白鵬と朝青龍がともに敗れ大波乱。
とはいえ、関西エリアは無風。
阪神がオリックスに勝ち、連敗を止める。


…盧武鉉前大統領の遺書がパソコンに残っていたと「自殺」と断定される。
パソコンに遺書?
これは…今月読んだ本『約束の地』に同様の偽装があったぞ。
現職の李明博政権の検察は捜査の打ち切りを決めた。
命と引き替えだったのか…?