2009/5/19 『スラムドッグ$ミリオネア』@西宮OS

7時15分起床、体重73.70キロ。
ゴミ捨ての火曜日、曇り空、涼しい。


インフルエンザのことを書くと自分も大騒ぎに荷担しているような気分になって憂鬱だ。
それでも、なお言いたいことはいっぱいあるので書きます。
(歳とともにへそ曲がりになっていきますね、社会の少数派になるとも言えますが…)


厚労省が水際防止作戦と称した機内検疫をやめた。
すでに通過して国内で二次感染が始まってるものね。
あのSF映画のような大仰な機内検疫はいったい何だったのか?
素人考えだけど、7日以上の潜伏期間があるんでしょう?
無理とは思うけど本気でやるなら入国者を7日は隔離しておかないと意味なかったのでは?
えらいことでっせ、がんばってまっせ、という厚労省のパフォーマンスじゃないのか?
結果的に言えばそれ以上の意味はなかったのでは?
神戸の医師が、潜伏期間もあるし、あの検疫はもれてるはず、と調べたら出てきた。
たまたま神戸で見つかったけど、もう日本中どこで見つかっても不思議じゃないと思う。


…jog&Podcast。
大竹まことがホテルのルームサービスでとったアイスコーヒーをこぼしたという話をする。
芝居の公演で疲れていたらしいが2日続けて部屋のフロアにぶちまけたという。
じじいになると(僕はまだ52だけど)、わかってても、やらかしてしまうんだよなあ。
僕も最近似たようなことが多いと自覚している。
何か机に置いてあるモノをとりたいとする。
対象物の手前に何か他のものがいくつか置いてある。
当然、邪魔になる。
それを避けて対象物をうまく取る、あるいはそれを他の場所によけてから行動する、べきだ。
頭ではわかっている。
でも、適切な行動がとれない。
過ちを回避する行動がとれない。
前頭葉が衰えてくるせいなのか。
我慢するという行為、発作的な行動を抑制するのも前頭葉らしい。
わかってても、ええい、めんどくさい、みたいな気分になる。
iPodのイヤホンのコードがもつれてたりする。
ちょっと冷静になってほどいていく方が早い。
我慢が出来ない。
ええい、とやってしまう。
よけいに問題がややこしくなる。
じじいが我慢がきかなくなるのは前頭葉が衰えてくるからだろうか。
みなさん、じじいが粗相をしても優しくしてください。


ラジオで、秋葉原に歩行者天国復活の動きがあるという話を聞いた。
あの事件は去年だった、たしか今頃の季節じゃなかったっけ?
6月8日だった。
まだ1年経っていなかったのだ。


代表が鳩山になり、民主党の支持率が上がった。
うーむ、わからないなあ。
自民党に上がる理由がないのは当然だけど。
小沢一郎から代表が替わるだけでこうなるの?
インフルエンザのニュースがなかったら、
代表選のメディア露出がもっとあったら、
支持率はもっと上がっていたのだろう。
ささいなことで順位がめまぐるしく入れ替わる。
世論調査のイメージはなんだかスケートのショートトラックに近いと思う。
最後に何かの要因でつま先がちょっと先を行けば勝つし、
敵が転べば勝利を手にすることが出来るし、全員コケて…というのもある。


少しブリキの笛(実は真ちゅう製)の練習。
もう、なにが吹きたいんだかわからへんわ、とまたヒロに怒られる。
間違えてばかりやし、イライラするわ、とも。
アイリッシュ魂は家族になかなか理解されない。


…午後から夫婦50割引で映画鑑賞、自転車で西宮ガーデンズへ行く。
道すがら高校生や中学生のグループが目立つ。
マスクの集団だから余計に目立つのだ。
年寄りは意外とマスクをしていない。
集団社会、組織社会から孤立しているからだ。
僕らもマスクをする気はない。


いつもは混んでいるガーデンズの店内も心なしか空いているような。
その分、たむろってる高校生が多いのだが…。
シネコンのスタッフは全員マスク着用、ちょっと気味が悪い。


『スラムドッグ$ミリオネア』@西宮OS
今年度オスカー8冠の作品に客は20人くらいか。


良くできた映画でした。
ボイル君は成績優秀、ノートに「よくできました」と判子が押してもらえる。
不遜な言い方をすればそうなる。
決して駄作でもない。
楽しめるのだけれど…心に刻印されるものがない。
がつん、がない。
インドの社会問題(貧困や都市問題など)はモチーフにしているが本質ではない。
娯楽に徹するにしても物足りない。


日本酒に喩えると金賞をとった大吟醸みたいな味か。
地方の小さな蔵ではなく灘や伏見の大資本が賞狙いで作りましたって感じの酒。
うまくまとまって舌や喉に刻まれるものがない。
いい意味でも悪い意味でも、がつん、と来ない。
うんこまみれの汚いシーンでさえスタイリッシュ。
臭いを感じさせないのはどうしてか?

 

去年の『ノー・カントリー』は荒削りだけど、がつん、があった。
娯楽映画として見る者を怖がらせてくれた。
一昨年の『クラッシュ』はここ数年の作品賞では最高だった。
ワクワク、ドキドキもあり、がつん、もあった。
『ミリオンダラーバイビー』には風格と雰囲気があった。
『ディパーテッド』は観ていない。
今年見た映画なら『グラン・トリノ』が好きだ。
造りは粗いが、がつん、があった。
『チェンジリング』も同様、これは完成度も高かった。
『チェイサー』は気分は最悪だが凄い映画の底力を感じた。
『ヤング@ハート』『バンクジョブ』『エグザイル 絆』『シャイン・ア・ライト』
みんな、がつん、とくる映画だった。
オスカー8冠だから辛口になるけど『スラムドッグ』は3〜3.5ブラボーかな。
いや、でも確かに脚本はうまく出来てると思うんだけど…。


主人公の幼い頃にスラムがヒンズー教徒に襲われる。
放火、略奪、レイプ、虐殺、そして報復。
10年くらい前に『ボンベイ』というインド映画でその史実を知った。
史実と言っても20年ほど前、1980年代のこと。
映画『ボンベイ』の殺し合いの描写は強烈だった。
おそらく事実だったのだろう。
当時は僕らの方にインドは平和でのんびりした国というイメージがあったので殊更だった。
『スラムドッグ』を見て、『ボンベイ』の映像を思い出した。


がつん、がないと書いたが、映画でもっとも、がつん、と来たのはムンバイの街の映像。
2000万近い人口を抱える巨大都市の底辺のスラム、その俯瞰の映像が凄い。
行ってみたいとも思うが、物見遊山の対象ではないだろう。


映画『ボンベイ』は悲劇と合わせて主人公が踊りまくる。
『踊るマハラジャ』と同様、マサラ映画の真骨頂を見せてくれた。
今回はハリウッドなので踊りはないのか、と思ったが、
最後に踊ってくれました。
ムンバイの駅で全員がアカデミー歌曲賞「JAIHO」を踊る。
いいんだけど物足りない。
(文句ばっかりだね)
歌曲賞なら、町山クンも言ってたけど『グラン・トリノ』でしょ。
あれは涙腺を激しく刺激する。
でも、ノミネートさえされなかった。


ここからはネタバレ要素あり。
まだ、見てない人はとばして下さい。


テレビのクイズショーでスラム育ちの教育を受けていない青年が全問正解。
全問正解のからくりは? と興味を持って見た。
で、ちょっと期待はずれだった。


彼は、ジャマールは、クイズの天才ではなかった。
映画の流れを見る限り、たまたま正解していったに過ぎない。
それが映画のストーリーそのものでもある。
愛すべきジャマールは貧しさゆえに鍛え抜かれた才能を自らの手で勝ち取った、
というわけじゃなかった。
そんなにインドは甘くないと言われれば、そうですか、と言わざるを得ない。
たまたま、だった。
僕はこの手のおとぎ話があんまり好きじゃないのでちょっと落胆した。


二度ほど問題がわからずピンチが襲う。
それをジャマールは裏切られた者が得た人間洞察力で切り抜ける。
で、最終問題。
2000万ルピー(日本円で5000万円くらいか)を手にするか、文無しになるか。
『三銃士』の一人を4択で当てろという問題。
は?
簡単すぎないか?
5000万の問題でしょ?

 

…映画のあと、ヒロと別れて大阪へ出る。
大阪に近づくにつれマスクが多くなる。
電車の車内マスク率が高くなる。
いつものように京橋で降りる。
マスク軍団に圧倒される。
自分はマスクをしていない。
なんだか非国民のような精神的圧迫を感じる。


スーツ姿のサラリーマンはほぼ100%マスクをして歩いている。
YTVの入り口には消毒薬のボトルが並んでいる。
なんだか感染列島の汚染源みたいな図だ。


こういうときに自分は非組織労働者だなと思う。
組織に属している人間は組織の号令でマスク着用、手洗い励行なのだ。
大阪駅では厚労省が「マスクを着用せよ」とアナウンスしている。
関西が汚染地帯のように扱われている。


でもさ。
朝にも書いたけどさ。
神戸の町医者が機転を利かせて調べたら見つかったんでしょ?
あの機内検疫はおかしい、と思った医者が高校生を再度調べたんだよ。
厚労省の指示では渡航歴のある人のみが対象だったんでしょ?
ガイドラインを遵守していれば見つからなかった。
正直に名乗り出たら汚染地帯扱いかよ、と憤慨してます。


症状も季節性のインフルエンザと違いはないし、むしろ軽症。
東京や地方でも感染者はかなりの数いるのだと思う。
おかしいと疑う医者がいなかっただけじゃないか。


今日、天満駅前を歩いたら立ち飲みの客がいつもの5割程度だった。
コンサートや修学旅行も中止になっている。
経済は大打撃だぞ。
ついこの前のゴールデンウイーク、高速1000円で全国的に沸いた。
経済が優先、不況対策の前には環境汚染なんて二の次にされた。
景気対策ファシズムだった。


今回、もしもの重大な事態になったときの時のシミュレーションというなら。
もういいでしょ、と思う。
一刻も早く沈静化して欲しい。


帰宅したらちょっと熱っぽくてダルい。
あのマスクにやられたようです。
風邪薬飲んで早めに寝る。