2011/4/22 誤解を恐れずに

…昨日読んで感応した『琥珀色の戯言』というブログの記事3つ。
このぷよねこ減量日記と同じhatenaダイアリーのお仲間です。


1.「いま、書いている人たち」に読んでもらいたい3つの文章
http://d.hatena.ne.jp/fujipon/20110421


本や雑誌の記事を3つ紹介してそのエッセンスを解説してくれている。
村上龍、糸井重里、小島慶子、各分野のトップランナー。
これも一種のキュレーションなんでしょう。
僕は(誤解を恐れずに言えば)「いま、書いている人」です。
ブログだって著述活動、小さなメディアです。
『琥珀色の戯言』の解説付きで読んで「いま、書いている人」として勇気づけられました。
例によって自分のために簡略化してコピペしておきます。


  「仕事における文章は、物語性がない分、さらに正確で簡潔であることが
  要求される。当然のことだが、コツや秘訣はない。ダメな文章を書く人は、
  文章が下手なのではなく、そもそも自分が何を伝えようとしているのか
  自分で理解できていない場合が多い。
  まず、どういったことを相手に伝えなければならないのかを把握しなければ、
  作業の前提が成立しない。うまい文章、華麗な文章、品のある文書、
  そんなものはない。正確で簡潔な文章という理想があるだけである。」
                            (村上龍)


正確で簡潔な文章という理想、心がけたいです。

 

  「人間関係は僕もあんまり得意じゃないから。嫌な人間と会わないっていうのが、
  一番ラクだよね(笑)。そうすれば悩みの半分は解決ですよ。
  そうするには……まず、逃げることですよ。
  そんなところにエネルギー使いたくないもん。
  関係が上手くいっている人との付き合いを疎かにしがちになっちゃう。
  学生の頃から不得意科目の点数を上げようとするおかげて、得意な科目が伸びない。
  まんべんなくは無理だって。まずそれが前提。
  大人だから「聞いてるフリ」とかテクニックは使えますよ、みんな。
  でも自分を理解してくれる人を大事にするってことが一番。
  それで、ひとりでも愚痴を聞いてくれる人がいれば、最高。」
                     (糸井重里 ロンブー田村淳との対談)


嫌な人間というのは不得意科目なのだ。
年齢にもよると思うけど嫌な人間とつきあう余分なエネルギーはないですよね。
若いときは…ちょっと違うかも。
でも、僕は8割方逃げてきたかもしれない。


  「皆さんはどう思われますか?」
  「難しい問題ですね」
  「これからも考えていかなければなりませんね」 
  意味があるようで、全く意味のない言葉。
  リスナーとトークパーソナリティの議論を整理しつつ番組を進めていく上で、
  私はその類の言葉は使いませんでした。
  典型的な耳障りのいい文句は必要ない。
  なぜなら、普段の会話にそんなフレーズは登場しないからです。
  言いませんよね? 友だちと話をしていて
  「それはずっと私たちが考えていかなきゃいけない問題だよね」なんて(笑)
                            (小島慶子)


以上の3つの文章を『琥珀色の戯言』の主はこう結んでいる。


  「自分が書きたいことを、他人に嫌われることをおそれずに書こう」
  ただ、それだけのことなんですけどね。
  それって、とても難しい。
  いまのように、誰かに「不謹慎」と告発されることが不安な時期には、とくに。


  「嫌われないための言葉というのは、誰からも愛されない」ということです。
  「お前なんか嫌いだ」という人に言い訳をするために時間を費やすのはなく、
  「それでも好きだ」と言ってくれる人のことを、大切にしよう。
  ひとりで生まれてきて、世界の誰かひとりでも少し幸せにできたら、
  たぶん、その人の人生の収支はプラスマイナスゼロだから。


今後、『ぷよねこ減量日記』も、もう少し正直に書きたいことを書くことにしよう。
反論されたり、嫌われたりすることを恐れずに。
『琥珀色の戯言』の書き手さん、ありがとうございます。

無趣味のすすめ 拡大決定版 (幻冬舎文庫)

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CIRCUS (サーカス) 2011年 04月号 [雑誌]

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ラジオの魂

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2.心を整える。 勝利をたぐり寄せるための56の習慣
http://d.hatena.ne.jp/fujipon/20110420


長谷部誠の著書の題名です。
丼氏が陸軍青年将校、あるいは下士官と喩えたサッカー選手です。
このベストセラーを読んで心に響いた部分を紹介している。
紹介しているブログを紹介するブログというのもまどろっこしい。
でもまあ、僕の個人的なメモですのでご容赦を。
興味ある方は原著、あるいは『琥珀色の戯言』を読んで下さい。


眼鏡堂氏も記事を書いていたナンバーの『アスリートの本棚』特集の表紙が長谷部だった。
いま、本屋に行くと目立つところに平積みにしてある。
読みたいけどヘソ曲がりなのもんで抵抗がある。
でも、ここに抜粋されている文章を読むと、読もうかな、と思い直す。
僕は長谷部のメンタリティに親近感を感じる。
誤解や、突っ込み、批判を恐れずに言えば(しばらくこのフレーズの乱用ご容赦!)、
僕と長谷部は似たところがあると思う。


  南アフリカ・ワールドカップ期間中、日本代表が拠点としていた
  ジョージのホテルには、選手のリフレッシュのために、
  いろいろな小道具が用意されていた。
  卓球、ダーツ、テレビゲーム……。
  また、ホテルはゴルフ場の施設内にあったので、もちろんゴルフもできる。
  このようなサッカーから離れた遊びが、選手たちの気分転換に一役買っていた。
  けれど、僕は何もやらなかった。それには理由があった。
  一日の最後に必ず30分間、心を鎮める時間を作りたかったのだ。


  ドイツには「整理整頓は、人生の半分である」ということわざがある。
  日頃から生理整頓を心がけていれば、それが生活や仕事に規律や秩序をもたらす。
  だから整理整頓は人生の半分と言えるくらい大切なんだ、という意味だ。
  このことわざに、僕も賛成だ。
  試合に負けた次の日などは、何もしたくなくなって、
  部屋が散らかってしまうことがある。
  あの場面でああすれば良かったという未練や悔しさが消えず、
  自分の心の中が散らかってしまっているからかもしれない。
  そんなときこそ、整理整頓を面倒くさがらなければ、
  同時に心の中も掃除されて、気分が晴れやかになる
  (中略)
  朝起きたら簡単にベッドメイキングする。本棚は乱れていたら整理する。
  ダイニングテーブルの上は物が散らかっていないようにする。
  ただ、あまり整理に対して気を遣いすぎると精神的に負担になるので、
  100点満点で言えば80点くらいの清潔感を保つようにしている。
  きれいになった部屋を見たら、誰だって心が落ち着く。
  僕は心がモヤモヤしたときこそ、身体を動かして整理整頓をしている。
  心の掃除もかねて。


心を整える。 勝利をたぐり寄せるための56の習慣

心を整える。 勝利をたぐり寄せるための56の習慣

 


3.あなたが主張している「正論」は、「不安な人」には届かない。
http://d.hatena.ne.jp/fujipon/20110418


世の中には、特にネット上では、傲慢な「正論」っていうのがありますね。
最近、「がんばろう」「信じてる」「ひとつになろう」の同調圧力も
不安な人にとって、逆に届きにくくなっているような気がする。
元々空っぽだった言葉が汚染されて耳障りなノイズになっているような気がする。
誤解を恐れずに言えば。

 

 

…もうひとつhatenaのダイアリー(ブログ)。
『小宇宙レコード 資料部』 http://d.hatena.ne.jp/gati/20110421
4/21付で、「明日、巨大地震が東京を遅う」としても、と題された記事を読む。
基調としてはこの本とこの本に載っていた詩の紹介。

日本の名詩、英語でおどる

日本の名詩、英語でおどる


正確で簡潔な文章という理想、に近いブログ記事です。
僕も紹介されている石原吉郎氏の『世界が滅びる日に』という詩に感銘を受けた。
石原氏は第二次大戦後にシベリア抑留、強制労働の経験を持つ詩人です。
仲間が次々と死んでいくなか、釈放の期日も分からず、
極寒の中で作業を続けた体験から、こんな飄々とした詩が生まれました。


    世界が滅びる日に


    かぜをひくな


    ビールスに気をつけろ


    ベランダにふとんを干しておけ


    ガスの元栓を忘れるな


    電気釜は8時に仕掛けておけ    (石原吉郎)

 

アーサー・ビナードの解説を引用している。
「防災を心掛ける以外に、一般市民にできることといえば、健康的な日常生活を送ること
 くらいかもしれない。町が焼け野原と化しても、生き残った人間は飯を食べ、睡眠も取り、
 乗り切るのだ。あやうく死にそこなったなら、なんとか風邪も避けたい。(中略)
 世界が滅びることを、嫌というほど体験した彼からのアドバイスは、
 言い方がちょっとつっけんどんだ。ブラックユーモアも入り交じってはいるが、
 ずばり的をえている。」(アーサー・ビナード『日本の名詩、英語でおどる』より)


有名な名言「明日、世界が終わろうとも、リンゴの木を植える」とも違う。
リンゴの木を植えるという宗教的で未来へのかすかな期待をこめた行為は石原の詩にはない。
平穏な日常生活、これ以外に、いや、これ以上に価値のあるものはないと言ってるのだ。
思うところがある。
僕にとって朝食が、平穏な日常生活、そのものだ。
震災後、当然かもしれないが、3.11以降も我が家では毎朝、普通に朝食を食べてきた。
被災地ではないから、いや、被災地ではないからこそ。
当たり前のようにご飯を炊いて味噌汁と惣菜3品を作る。
誤解を恐れずに言えば、これって石原吉郎の詩の精神ですよね。


たとえ世界の滅びる日の朝だとしても。(写真:2011/4/23の朝食)

    世界が滅びる日に
    栄養バランスのよい食事を心がけよ
    野菜はかならず食べること
    タンパク質も、ミネラルも。
    塩分はひかえめに
    食べたあとは
    減量のため小一時間走るのだ