2012/4/19 葉桜の季節に

すっかり葉桜になった。
ことしは夙川公園の桜のトンネルを当日記で定点観測してきた。
新緑の季節は好きなので大歓迎だが淋しさも少しある。
数年前に『葉桜の季節に君を想うということ』(2003年 歌野晶午)という小説を読んだ。
この物語で葉桜が何を象徴するのか…ネタバレなので書くまい。
映像化絶対不可能、だったはずだ。


…勇気について思う。
前にも日記に書いた。
『ストリーム』というラジオ番組で小西克哉がこんな話をした。
産経新聞が日本の小中学生に欠けているのは

『自尊心』であると強調した記事にした。
記事が引用した調査結果によると韓国でも同じ『自尊心』が

欠けているとされ日本だけがそうではない。
産経の書き方はあまりに作為的であると小西氏は看破した。
そして言った。
小中学生の評価指標で『協調性』とか『思いやり』とかはあるけれど、
老若を問わず今の日本人に一番足りないのは『勇気』だと思う、と。
愛国とか品格とか自尊心とかよりも、大事なのは『勇気』ではないか、と。
正しいことを言う勇気、新しいことに一人で挑む勇気、他人と違う生き方を選ぶ勇気。


映画『ヘルプ』の中で黒人教会の指導者が言う。
「勇気とは勇ましいということではありません。

勇気とは正しいことをすることなのです。」


『ヘルプ』@リーブル神戸
曇り空、阪神電車で三宮に出る。
リーブルのポイントが3015点 貯まっているので無料3本で見られる。
客は20人くらい。


1960年代のミシシッピ州ジャクソン。
バスもトイレも白人用と黒人用があった時代。
南部の緑したたる街は美しいが、そこには人種隔離政策の現実があった。
そんな街で真実を本に書こうと決意した若い白人女性と命をかけて協力した黒人のメイドたちの物語。
シリアスな話なのに決して重苦しく感じさせないのはユーモアのスパイスが効いているからだ。
決してハッピーエンドではないけれど、少なくとも風通しがよくなり時代は一歩だけ前進する。


いい映画でした。
でも画面を支配する清潔感というか、小ぎれいさにちょっと違和感はあったけどね。
間違ってはいないだろうし、切実さや理不尽さや怒りも伝わるんだけど、どこか嘘くさい。
ドリームワークス仕様なのだろう。
汗や匂いをあえて排した演出。
なんかケチつけてるみたいだけど違うんです。
ドキュメンタリータッチにして、画面から埃や臭気が沸き立つような演出にすべき? だとは思いません。
(汚い画面? 兵庫県知事を思い出しました)
ただ、舞台劇みたいだなと思っただけです。


いい人と悪い人が登場する。
ものすごくわかりやすい。
悪い人は美人なのに醜い。
いい人は美しく見える。
役者は演技に成功しているし制作の意図も伝わっている。
破綻は何もない。


たぶん、悪い人(人種差別主義者)の造形が単純すぎるのだろう。
身近な黒人メイドを差別しておきながらアフリカの子供たちを救おうと何の疑いもなく思う女性たち。
これだって、どこの国でもいつの時代でも同じ。
たぶん、彼女たちの心の中を深く描いたり、造形を複雑にしたら物語のエッジが失われてしまうだろう。
破綻は何もない。


この被差別感は自分も時々感じているぞと映画を見ながら思った。
僕は非正規雇用の労働者で、しかも今はハケンの身の上。
望んだことでもあるし(ハケンは望んでないけど)収入や待遇に特に不満はないけれど。
こういう業界構造は間違っている、人材を育てないと思いながら仕事をしている。
法律でさえも弱いものを守るどころか逆に締めつける。
労働者派遣法はジム・クロウ法に通ず。
だから、僕は黒人メイドの気持ちに少しだけ強く感情移入出来る。


女性映画である。
女優陣の演技が素晴らしい。
メイドのエイブリン役のヴィオラ・デイビスの心をオフにした表情がいい。
彼女の悲しみがいっそう際だつ。
ライター志望のスキーターが可愛い。
エマ・ストーンという23歳の女優。
調べるとゾンビ映画とかB級コメディとかに出ていたくらいでこれが出世作か。
ファニーフェイスでゴールディー・ホーンを思い出した。
(ゴールディー・ホーンの娘はケイト・ハドソンですが)
彼女はアリゾナ州スコッツデール出身。
メジャーのキャンプ取材で行ったことがある。
ゴルフ場がいっぱいあって、映画のセットみたいなきれいな街並が印象的だった。
映画で人種差別主義者の主婦ヒリーを演じたブライス・ダラス・ハワードという女優。
どこかで聞いた名前だと思ったらシャマランの『ヴィレッジ』でミステリアスな盲目の美少女を演じた女優だった。
右の写真(バラの柄のドレス)、イメージが全く違うので別人のようだったがよく見ると彼女だ。
ロン・ハワード監督の娘だ。

 

…南京町の『ぎょうざ苑』で焼き餃子一人前とジャージャー麺。
早めに帰宅して、夜はプールへ行く。
プールからの帰り、雨が降り出す。
明日は雨の予報。