2013/3/28 雨だけどピーカン

水戸岡鋭治というインダストリアル・デザイナーの評伝を読む。
一志治夫「幸福な食堂車」という本で、水戸岡さんはJR九州の列車や駅などをデザインした人だ。

幸福な食堂車 ― 九州新幹線のデザイナー 水戸岡鋭治の「気」と「志」

幸福な食堂車 ― 九州新幹線のデザイナー 水戸岡鋭治の「気」と「志」


この本の中にレイモンド・ローウィという工業デザイナーの話が登場する。
フランス出身のアメリカ人でその筋ではカリスマ的な存在らしい。
日本における最初にして最大の代表作がこれ。
オリーブを枝をくわえた鳩です。


           


ちなみにこの青はピーカン=快晴の語源にもなっている。
(諸説ありますが…)
でも、こうして見るとこの黒に近いブルーはよほどの高山帯でしかあり得ないな。


他にもラッキーストライク、不二家、シェル、ミツワ石けんのパッケージデザインも彼の手によるもの。
(あらゆる工業製品のデザインを手がけ、“口紅から列車まで” と言われるほど守備範囲は広い)
僕の部屋にもあった。
真ん中のアサヒビールがローウィ作、左のサッポロはランドーという人のデザインらしい。
   


「幸福な食堂車」は読み始めたばかりだがいろんな意味で面白い。
水戸岡さんは僕より10歳上の世代、時代の青春記とも読めるし、デザインという仕事を考える上でも興味深い。
冒頭は富士急の富士吉田駅のリニューアルするというエピソードだ。
水戸岡の仕事は5つのSが基本だ。
整理、整頓、清掃、清潔、しつけ、だ。
徹底的に整理、排除、廃棄が始まる。


   「こういう、いらんことはしなくていいのに。皆が余計なことをしたがる。そのまましておくと、こういうのがどんどん増えていくんだ」
    水戸岡が腹を立てていたのは、構内に入ってすぐのところに立てられていた看板だった。
    駅から隣接するカフェへと導くための手書きの案内板だ。
    もちろんデザイナーの許可を得ることなく立てられたものである。
    情報を必要とする人がいるであろうから、あるいは店の宣伝は不可欠であろうから立てる。
    それが立てる側の論理だ。しかし、これをやっていけば、公共の場にはやがて情報があふれかえり、混戦し、人は結局混乱の中に佇むことになる。
    少しでもわからないことがあったり、問い合わせが来たりすると、すぐにポスターや指示板を立てる悪癖が日本人にはある。
    事故が起きた道路に間隔などを気にせず次々と横断歩道や信号が設置されていくのと同じ理屈だ。
    過剰な説明と饒舌な宣伝は、街や駅といった公共の場をどんどん汚し、息苦しくしていく。


これを読んで思い出した。
(富士吉田駅の事例とは意味合いが違いますが…)
最近、通っているスポーツクラブで盗難があった。
クラブ側が過剰反応したのかロッカールームが異常な光景となった。
「盗難事件が発生しました。必ず施錠してキーは持ち歩き下さい」
こう書かれた真っ赤なステッカーが全てのロッカーに貼られた。
そこまでしなくても…誰もがそう思ったに違いない。
写真に撮ってはいないが、視覚的に明らかに醜悪。
もちろん内容が内容だけに殺伐とした気分にもなる。
すっきりした清潔なロッカールームだったのに…。
デザインは人の心も支配する。
水戸岡さんの怒りも理解出来る。


…2日連続の雨ごもり、今日は一歩も外へ出なかった。
やったことと言えば…スノーシューなどの冬山装備を収納した。
登山靴をカラ拭きして靴箱に収めた。
部屋を掃除した。
雑誌と本を整理、数十冊を減らした。
トイレのヒーターを仕舞った。
ホコリの溜まっていそうな箇所をクイックルワイパーで掃除し雑巾がけをした。
そんな些細なことだけど気分がスッキリした。
水戸岡さんのいう5つのSのうち、整理、整頓、清掃、清潔、

そして、その状態をキープするしつけ、だ。
なるほど。