2013/3/3 石塀小路を抜けて

ここ数年、読書量が劇的に減っている。
なのに部屋の本は増殖を続けている。
要するに積ん読(つんどく)人間になっているということか。
去年か一昨年に読んだ本を手にとってパラパラとやる。
小説もエッセイも評論も内容がさっぱり思い出せない。
何のための読書か、と思う。
若い頃はしっかりと記憶に定着させていたはずだ。
今はいつのまにか溶けているイメージ。
50年余の集積。
もともとスペックの小さい僕のメモリーは20年くらい前あたりからオーバーフロウしていたのだと思う。
知識を得るためだけが読書の楽しみではない。
居直って読む端から忘れていけばいいのだ。
ならば、待てよと思う。
未読既読を含めて目の前に本の山があるじゃないか。
もう新刊なんて買う必要がないのでは?
そういうわけにはいかないですよね。


記憶に定着させずとも読むことで、ちょっと影響を受けて、人生が変わることもある。
そいう読書がいいのかなと思う。


  


日曜日、朝からヒロと阪急電車で京都へ出る。
晴れているが寒い。
まだまだ季節は冬だ。
鴨川を渡り、南座の前を過ぎ、八坂神社を抜け、石塀小路という風情のある石畳を歩く。
http://www.kyoto-gion.jp/michi/1/ishibei.html
  


「紅蝙蝠(べにこうもり」という和風カフェで昼食。
以前、Mのランチで紹介してた高級料亭のまかないだった鯛のそぼろ御飯をいただく。
http://emunoranchi.blog65.fc2.com/blog-entry-3891.html
ふわふわの出汁巻き卵と白味噌の味噌汁がついて1100円。
  


京風の薄味が上品で美味しかった。
少なめの量も僕ら中高年には有り難い。
場所は親子丼で有名な「ひさご」の北側の路地を入ったところ。
寒いので鴨ねぎにゅうめんにもそそられたが初志貫徹。
まあ、観光客向けだけど、お庭を見ながら食べられて、

ゆっくり落ち着けて、それなりに京都を楽しめます。
  


鴨川上流の山は冠雪していた。
ひょっとしたら霧氷もついているかも。
そう言えばA木がきょう3月3日に金剛山の霧氷を撮影にいきたいと言っていた。
僕は、3月に霧氷なんて無理無理、と言ったっけ。
あるかもしれない。
帰って金剛山山頂情報で調べたらここ1週間は無かったのに

今日は、霧氷あり、となっていた。
  

 


八坂神社から鴨川べりへ戻り左岸を遡る。
丸太町通りで右岸へ渡る。
河原町丸太町の交差点を上がり府立病院前の文化芸術会館まで歩く。
身じろぎもせず川岸にたたずむアオサギ、寒さに耐えているのだろうか。
右はキンクロハジロだろうか。
潜水ガモで何度も水中に消えては浮かぶ姿が愛らしい。
  


…うなるカリスマ 国本武春@京都府立文化芸術会館
正月の浪曲会でもらったチラシで知った公演でペアで6000円、

前から4番目の見やすい席でした。
浪曲はここ数年で100席近く聴いたがすべて江戸の浪曲は初めて生で聴く。
天中軒雲月さんは名古屋の人だから半分は東京で活動しているが

厳密に言えば江戸の浪曲ではない。
国本武春は両親ともに浪曲師、東家幸楽に弟子入り、

東家みさ子に三味線を習ったバリバリの江戸もの。
その東男が京で忠臣蔵をうなる、という趣向。
曲師は沢村豊子師匠、粋です。

  


二部構成で、前半はオーソドックスな浪曲。
十八番の「赤垣源蔵徳利の別れ」です。
(赤垣屋行きたい!)
初心者向けに浪曲ガイダンスのような解説が入るので

ちょっと物語に入っていけなかったのが残念。
後半はこの人得意の三味線弾き語り浪曲でした。
フォークソングの弾き語りスタイル、衣装もデニムのジーンズ。
なるほど才能のある人だな、と思う。
まさに芸のある人、テレビでトークしてるだけのお笑い芸人とは違う。
関東節らしくキレがある。
落語と共通してるな。
エラソウで申し訳ないが公演そのものが初心者向けだったので楽しかったが物足りない。
バリバリの江戸前浪曲をたっぷり聴きたかった。
京山幸枝若の関西節と聞き比べしてみたい。
ああ、幸枝若が聴きたいなあ。
クライマックスへ向かってぐわんぐわんとドライブしてゆく節回し、陶酔の至芸だ。


「ブワ ブワ ブワハハハ、鮒じゃ、鮒じゃ、鮒侍じゃ」
国本武春の上野介のベースは上田吉二郎ですな。(古い?)


国本武春は2年前、突然のウイルス脳炎で生死をさまよった。
3ヶ月間意識不明、社会復帰は無理と言われたらしい。
http://www.asahi.com/showbiz/stage/theater/TKY201206080351.html
芸道一筋、しかも才能に溢れ進取の気質がある。
浪曲、三味線、ロック、ブルース、ミュージカルに古典浪曲のエヴァンジェリスト。
寛平のギャグではないが、ワシは止まると死ぬのじゃ、というタイプ。
歌舞伎の勘三郎さんと共通したものを感じる。
この病から九死に一生を得てスローダウンしたのだろうか。
なんてエラソウニ書いてしまう。
一度、たっぷりの浪曲ききたいもの。
東西名人浪曲みたいなイベントで京山幸枝若や松浦四郎若あたりと競ってくれないかな。


…終演後、寺町通りを下り四条まで歩く。
今日は12キロほどのウォーキング。
四条の「おめん」でちょっと早い夕食。
少しだけお酒を飲む。
隣の席の初老の夫婦の会話。
夫「おお、この店、ウィーフィーがつかえるんやな」
妻「恥ずかしいこといいなさんな。ワイファイ言うんやアホか!」
思わず吹き出してしまう。
あんたらナイツか。


阪急電車で爆睡して帰宅。
WBCは中国戦、今日はジャパン快勝。
夜はマンU香川のハットトリックのニュースを見て寝る。
確定申告の提出を急ごう。