2011/2/18 こら、えりぼう!

暗い朝、しとしと雨が降っている。
朝は一昨日見た文楽の感想を少し書き足したりして過ごす。


…朝食は食べず大江戸線で築地市場へ出る。
久々に『きつねや』にてホルモン丼を食べる。
色は濃くて見た目は強烈だが意外に味付けはさっぱりしている。
http://r.tabelog.com/tokyo/A1313/A131301/13007656/
http://mugikikaku.exblog.jp/12599109/


…新橋に出てJRで横浜駅まで行く。
東京から横浜へ行くには実にいろいろなルートがあることを知る。
駅近くの神奈川県民センターで昨日いっしょに飲んだA藤と合流。
野球解説者のM氏と小一時間打ち合わせをする。
これまた書きたいネタを山ほど仕入れたが無理、書けません。
横浜上空、雲行きが怪しい。


…横浜から東横線で中目黒、中目黒から日比谷線で六本木
地下鉄駅から地上へ出ると、空は青空、ビル風が強く吹いていた。


東京五美術大学連合卒業・終了制作展@国立新美術館
まず建物の巨大さに圧倒される。
ガラス張りなのに曲線ばかりで構成されたデザイン。
うねり、のたうつ、巨大な温室を思わせる。
故 黒川紀章氏の設計らしい。


新美術館は広大だった。
ベルリンあたりにありそうなモダンなカフェテリア。


東京五美術大学。
日本大学芸術学部、武蔵野美術大学、多摩美術大学、女子美術大学、東京造形大学。
これまで美大とは関わりなく人生を送ってきた。
金沢にも県立美術工芸大学があったが友人の友人どまり。
つまり、人生初めて未知の美大ゾーンに足を踏み入れたことになる。

 


圧倒される。
美術館の外観にも圧倒されたが中に入って二度目の圧倒。
膨大な数の作品、色の洪水、視覚へのテロ攻撃、
見る者に、ど、どうですか! と迫ってくるようなパワーにひたすら圧倒される。


どうやって描いたの? と驚くほど大きなサイズの絵があり、
どのくらい時間を費やしたのか? と驚くほど精密な版画があり、
本物かと見間違うほどの生々しい彫刻があり、
ユーモアと風刺にあふれ、思わずクスっと笑ってしまう組絵(?)あり、
誰だ、こんなとこに粗大ゴミ置いたのは、とよくわからない前衛あり、
どうみても小学生の夏休みの工作にしかみえないオブジェあり。


当番なのだろう。
ところどころのコーナーに学生が座っている。
たいていは女子学生で、ずっと本を読んでいる。
この子たちの頭の中ってどーなってんだろ?


これが美大ワールド…。
後ずさりするような「なんじゃもんじゃ」の世界に圧倒されました。
今まで嫁に誘われて美術展にはいろいろ行った。
けど、これほどの数と種類とパワーは初めての体験でした。


ぼくらの学生生活は四畳半とバイトと酒と貧乏旅行。
美大のキャンパスって自分らのとは違うんだろうな。
ふと、『フェーム』のワンシーンを思い出した。
アラン・パーカー監督の『フェーム』って映画。
美大ではなくN.Y.の芸術アカデミーの学生たちのドラマだった。
音楽、演劇、ダンス、一芸に秀でた若者たちが学食に集まり歌い踊るシーンが印象に残る。
カッコイイ!
あこがれたけど自分があの世界に入るなんて想像も出来ない。

 

武蔵野美大の展示室を巡る。
えりぼうの絵を探す。
彼女は日本画学科。
日本画といっても襖絵とか屏風絵とか墨絵とか東山魁夷みたいな自然画だけじゃない。
かなりポップなイラスト風な作品もある。


以前、京都の喫茶店で、どんな絵を描いてるの、と聞いたことがある。
iPhoneに保存された作品をいくつか見せてくれた。
へえ、凄いな、これ全部この子が自分で描いたのか…!(当たり前ですね)
小学生のころ、クラスの目立たない女子がピアノでトルコ行進曲をさらっと弾いたのを思い出す。
クラスの男子は尊敬し、あこがれ、好きになってしまう。
絵の上手な子も思わず惚れてしまいそうになる。
こら、オヤジ! 
すいません。
でも、貧乏な小市民男子ってそんなものなんです。


えりぼうの絵、見つけた!
遠目からでも、あの絵だ、ってわかった。
彼女が前に使っていたTwitter のアイコンと同じタッチだったから。
眠る人。
アイコンは幼い男の子(?)だったけど展示作品は女性だった。
眠る裸婦。
無防備に眠っている女性。
筋肉質、太ももの筋肉が異様にたくましい。
スピードスケートか自転車競技の選手のようだ。


タイトルは『こんな夢を見た』
絵に描かれた彼女が夢を見ているのか、
えりぼうが彼女の夢を見ているのか、
あるいは、彼女がえりぼうの分身なのか、
どんな夢? そっと絵の彼女に問いかけたくなる。
白いキャンバスに黒とわずかな紅だけで描かれたシンプルな絵。
極彩色の絵に挟まれて、そこだけ淡い光が当たっているような存在感があった。

 

 


さて、ええカッコするのはこれくらいにして…と。

 

 

ゴメンなさい。
よくわかりませんでした。
わかる、わからないではない、アナタは ど、どう感じたか? ですよね。
上手だなあって思いました。
小学生の絵日記か。
絵の感想を文章にするのって苦手なんです。
教養ないし。
うまく書こうとするとワケわからなくなるし馬鹿にされたくもなし。


正直言えば…叔父さんちょっとドギマギしてしまいました。
うまく説明できないので僕と丼さんが交わしたメールを紹介しますね。
ブログで感想をすでにアップしている丼おじさんが展覧会へ行った日のDMです。
「新 ぽっちゃりスポーツ天国」http://blog.livedoor.jp/keitacsr-new/archives/4124988.html
丼さんにも承諾を得ているので載せちゃいます。
時間軸は下から上へ、です。
  
 

丼さんの「この人、裸だから写真撮ってるんだ」には思わず吹き出してしましました。
これがオジさんたちの下世話な実態です。(丼さん、巻き込んでスイマセン)
一生に一度の卒業制作なのに申し訳ない。
悪気はないんで怒らんといて下さい。


でも、想像してしまったんです。
たとえば…眼鏡堂さんが小学生の次男坊を連れて展覧会に来ます。
お父さんのお友達の絵があるんだよ。
どんな絵だろうね?
楽しみだね。
(絵を見つける二人)
あ、これだ。
……。
ぽかんと口を開けて裸婦像を見つめる小学生。
父眼鏡堂、心の中で、
「こら、えりぼう! 」
じゃないかなあ、と推測。


えへへ、眼鏡堂さんも巻き込んでしまった。


もっと見ていたかったけど文楽のチケットを買いにいかねば。
小一時間で国立新美術館をあとにする。
帰りに五美大展の目録と美術展でいう図録をもらう。
立派なカラー印刷の日本画学科の作品集、えりぼうの絵が載っているのを確かめる。
展示されているの絵とは違うタッチの作品がもうひとつ載っている。
暗いトーンの裸婦。
ずんと重量感のある絵、吸い込まれます。


六本木の空はひたすら青かった。


…文楽2月公演、夜の部『義経千本桜』@国立劇場小劇場
4時半過ぎ、国立新美術館から国立劇場へ移動、チケットを買いに行く。
チケット売り場で「本日、夜の部は貸し切りです」と言われる。
ええええええ!
貸し切りなんてあるのか。


昨日まで3夜続けての酒宴だった。
今日は早めに寝なさいと神様が戒めているのだ。
ご神託に素直に従いとっとと宿に戻る。
銭湯につかり、近所の居酒屋で軽く独酌。
22時過ぎ、テレビも見ず早々に寝た。