2011/5/7 野崎詣り

明日から3日連続デスク、とその前に野崎詣りに行ってきました。
今日もダラダラと書きます。しばしのおつき合いを。
先ずはこの唄を聞いていただきたい。
昭和10年、当時一世を風靡した名曲、唄うは東海林太郎先生。


   野崎まいりは 屋形船でまいろ
   どこを向いても 菜の花ざかり
   粋な日傘にゃ 蝶々もとまる
   呼んで見ようか 土手の人


   野崎まいりは 屋形船でまいろ
   お染久松 切ない恋に
   残る紅梅 久作屋敷
   今も降らすか 春の雨


   野崎まいりは 屋形船でまいろ
   音にきこえた 観音ござる
   お願かけよか うたりょか滝に
   滝は白絹 法の水

 


続いて上方落語の「野崎詣り」、松之助師匠の枕でいきなり笑えます。
この落語の中にも艶っぽい「野崎小唄」が唄われてます。

http://www.youtube.com/watch?v=3ck_52Ix4dM
http://www.youtube.com/watch?v=jPi2uYU3Bhg


こちらは正統派の三代目桂春団治師匠の「野崎詣り」のっけから名調子です。
華やかな出囃子は先代から受け継がれた「野崎」という曲です。
三味線をうまく使った噺です。


さて、ぷよねこの野崎詣りですが…。
行ってみよか、詣うでてみよか、と思ったのは
文楽で『女殺油地獄』を見たのと、京橋駅に貼ってあったこのポスターだった。      
  


のざきまいりというのは季節ものなのだと知る。
唄にも、どこを向いても菜の花盛り、とあるのはそういうことか。
境内では大道芸とか歌舞伎芝居とかも催されて大層賑やかであるらしい。
関西在住ならば一度は行くのもありかと腰を上げた。
大阪の歴史指南役としてセルジオを誘う。


野崎詣りは曹洞宗慈眼寺へ参詣することを指す。
慈眼寺の本尊は観音様、唄にも、音に聞こえた野崎ござる、とある。
観光案内のWEBページによると野崎詣りが始まったのは江戸時代元禄年間。
宣伝が上手かったのか大阪の街で熱病のように広がったとある。
最初は一種の流行もんだったわけですね。
屋形船でまいろ、とあるように当時は陸路の他に水路もあった。
大阪市内の中心部、八軒家浜(現在の天満橋あたり)から船に乗り、野崎の深野池までを遡る。
落語にもあるが陸路(川の土手)を行く参詣客と船の客とが口げんかをしたらしい。
言い負かした方がその1年いいことがあると言われがあったのだとか。
武士文化の江戸ではあり得ない。しゃべくり町人文化の上方らしい。


『女殺油地獄』では与兵衛がワル仲間とよからぬことを画策して野崎詣りにやってくる。
賑わう参道脇で殺人事件の発端となる騒動が起きるのだ。
野崎詣りが舞台となる歌舞伎(浄瑠璃)としては油地獄より
『新版歌祭文(うたさいもん)・野崎村の段』の方が有名であるらしい。
野崎小唄にも、お染久松せつない恋に と唄われる心中ものだ。
若い奉公人の久松の出身地が野崎だった。
お染久松が前面に出ているが真のヒロインは自ら身を退き尼になった久松の許嫁お光(おみつ)だ。


いまは屋形船もなくJR学研都市線で野崎駅まで鉄路で行く。
iPodで東海林太郎先生の唄と松之助師匠の噺を聞きながら。
この路線は僕の通勤路ルート、降車駅の京橋から先は滅多に行かない。
幸いなことに乗り過ごした経験もないので京橋の先へ行くのは十何年ぶりかもしれない。
野崎駅でセルジオと合流、駅前には露天が出て大賑わいだ。
  


参道に300を越える露天がひしめく。
久々にスマートボールや型抜き、うなぎ釣り、輪投げ、射的の露天を見た。
僕が子供のころの祭りで見たのは愛知県三河地方の露天商だから関西のは珍しい。
最近は韓国系、あるいはトルコ系の店も増えた。
セルジオが、テキ屋の顔つきがちょっと違う、指摘する。
そう言われると、なるほど河内の土着民、アーシーなルックスだ。
ケバブを売っているトルコ人にも負けてない濃い人々。
南米アンデスのインディオっぽいおばちゃんもいるぞ。(絶対に違うと思うけど)


150段ある石段を登ると汗ばむくらいの陽気。
境内は色とりどりの幟やツツジで華やか、午後遅かったので参拝客はそれほど多くない。
展望所からは大阪中心部の摩天楼(?)が見渡せる。
休憩所で地元のおっさんらに茶をふるまわれる。
冷たい麦茶が嬉しい。


午前中に歌舞伎を上演した仮説の舞台でさえない手品師が大道芸をしていた。
まったく受けていないのが逆に可笑しくてたまらない。


藤(山藤)の花が咲く。
巻きつかれているのは何の木だろう。


ツツジはほぼ満開。


境内にお染と久松の塚があった。


野崎観音は居眠り防止の御利益があるらしい。
松之助が『野崎詣り』の枕にそんなことを話す。
なんでも西国三十三カ所の順番を決める会合で慈眼寺の住職が居眠りをしていたらしい。
おかげで由緒ある寺でありながら三十三カ所にも番外にも入れなかった。
なんたる脱力系のエピソード。
だからといって居眠り防止に効力があるだなんて実にテキトーだと思う。


帰りに参道脇のスーパーで缶ビールを買う。
僕は奮発してエビス、最近実入りの少ないセルジオは金麦。
露天で玉子せんべい(200円)なるジャンクな食いものを買い食い。
セルジオは同じスーパーでハムカツ(50円)。
祭りはいい。
昼間っから缶ビール片手に飲み歩いても後ろめたい気分にならずに済む。
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来た道を屋形船、じゃなく鉄路で戻る。
4日前に行った天満の風呂『楽天地温泉』につかり『ダイワ食堂』で締め。
あ、正確には『ミツバチ珈琲』で締め、でした。


…新聞で団鬼六氏の訃報を知る。
官能小説、SM小説で有名な氏だが自伝的なエッセイは抜群に面白かった。
結婚前のヒロに進められて読み始めたがマジで止まらない。
特に『蛇のみちは』と『真剣師小池重明』がいい。

蛇のみちは―団鬼六自伝 (幻冬舎アウトロー文庫)

蛇のみちは―団鬼六自伝 (幻冬舎アウトロー文庫)


真剣師小池重明 (幻冬舎アウトロー文庫)

真剣師小池重明 (幻冬舎アウトロー文庫)


読んでない人が羨ましいくらい。
波瀾万丈な人生、他人の10倍くらい楽しい人生ではなかったかと勝手に想像する。


30代のころ、テレビ大阪の西川きよしの番組で『おおさか今昔物語』を担当した。
大阪の地下鉄事始めとか阪急百貨店とか70年の万博のエピソードとかを
林家染二(当時)さんのナレーションで紹介するコーナーだった。
今ならもっと面白く作る自信あるんだけどな。


…今朝の体重、72.60キロと一晩で1.2キロ減る。
1日の74.65から一週間で2キロ減っていることになる。
適職と称して1800キロカロリーを守っているだけなのに。
いままでいかに食べ過ぎていたかを反省する。