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2012/4/27 若葉のころ

新緑の季節、晴れると無敵の美しさで緑が輝く。
ケヤキやニレのような地味な木々にとって初夏と晩秋は晴れ舞台だ。
若葉が美しい樹は紅葉の彩りも捨てがたい。
きょう、夙川公園で一番べっぴんさんだったのはこの欅の木。

気仙沼出身のシンガー畠山美由紀さんにも「若葉のころや」という曲がある。
このPVもなかなかいいです。
http://www.youtube.com/watch?v=YrblvA4E7YE


若葉、と聞いて思い出すのはビージーズと金子光晴。
映画『小さな恋のメロディー』の挿入歌 First of May の邦題が「若葉のころ」だった。
20年ほど前、自動車のCMで使われ、僕はこの曲の存在を思い出した。
http://www.youtube.com/watch?v=CmB9llwFy-Y (BeeGeesではありませんが)


若葉、は詩人金子光晴の孫娘の名前。
反骨の詩人が晩年、好々爺になって何編かの詩を書いた。
若葉の詩だけで一冊の詩集を書いてしまうほど爺さんは孫に入れ込んだ。


   人生はいつでも出発だ。若い日のその実感を 
   僕は ひさしくわすれていたものだ。
 
   ごらん。僕の骸骨は摩滅して ひびだらけで、ぐさぐさで、
   立ちあがるだけが一苦労だ。


   「若葉」といっしょなればこそ、
   大王松を飛び越えて 流れる雲に追いつけるのだ。


   そうだ。この人生には 勇気というものがあったのだっけ。
   若い日 僕もそれを持っていた。


   だが、それはどこではぐれたかしら 
   万年床を辷り出して いまは、どうだんの垣根に添うて歩く杖が勇気だ。


   二歳とすこしの「若葉」と 七十歳の僕とは
   こうやって同時に生きている。
 

   ぶらんこを大きくこぎながら
   遠すぎるむかしの 手がかりのない記憶をさがす。


   「若葉」を僕が抱くように、 
   同じように僕を抱いて 遊んでくれた誰かがあったはずだ。


   まぼろしにもうかばないその人たちを 水にもうつらないその俤を、
   教えてくれる人は猶更いない。


   僕が二歳で、その人たちが 七十歳であったとしても
   その瞬間を 同時に生きていたのに。

                        金子光晴「若葉のうた」より


2005年の初夏、蓮華温泉へと続く若葉の道で金子光晴を想った。
「人生はいつでも出発だ。若い日のその実感を 僕は ひさしくわすれていたものだ。」
若葉みどりの若さを想う。
もう若葉みどりではない自分やヒロを想う。
かつて若葉だった自分を思い出すが、
思い出が像を結ばない。


新緑の季節になると回想モードに入る。
2009年4月27日の「ぷよねこ減量日記」にこんなことを書いている。
四国高松へ寿司を食べに行く高速バスの中、MacBookでパタパタとやった。


 温泉に行きたいなあ。
 緑したたる山の、その奥にある秘湯。
 ぬる湯だったら嬉しいな。
 しずかにカッコウが鳴く森の湯小屋で1時間でも2時間でもつかっていたい。
 ぬる湯で身の振り方を考えよう。
 きっと良き考えが浮かぶはずだ。
 いや、違うな。
 たいていはお酒を飲んで必要以上に眠って帰ってくるだけだもんな。
 本さえ読まない。
 ああ、あと10年は働けたらなあ、我に働く仕事あれ だ。
 自分から仕事とりに行ったことなんてないものなあ。
 思えば太平安楽な人生だった。
 幸い子供もいない。
 人生に幕を引こうか?
 方法を思い浮かべるだけで恐怖で身がすくむ。
 第一、命を絶つような理由もないか。
 本当に追い込まれたら考えればいい。
 今夜は極上の鮨屋を予約してあるんだ。
 人生はまだけっこう楽しいし。
 なーにやってんすかあ、と蔑まれても我慢しよう。
 ほっほっほっ。
(奥田英朗風に締めてみました)


2009年4月、酔狂にも高松に鮨を食べに出かけたバスの車中で書いた日記です。
車窓から見える淡路島や四国の新緑がきれいだった。
あらたふと青葉若葉の日の光、なんちってね。
なだれ落ちるような若葉みどりの中、遠くでカッコウが鳴いている、なんちってね。
この年の4月にハケンになった。
とたんに他の仕事がなくなっててヒマになった。
不安だったはずなのにこうして読み返すと幸せそうだ。
僕は仕事に向いていないのかも知れない。
そのくせ何事か成し遂げた人に見とれてしまう。
感動したりする。
憧憬を禁じ得ない。
「ザ・プロフェッショナル」とか「情熱大陸」とか見ると心落ち着かない。
自分はこのままでいいのか、なんちってね。
怠け者でありたいという心と明らかに矛盾している。
僕の年齢で青年のような迷いを抱くこと自体こっぱずかしいことである。


若葉の歌をもうひとつ。
♪わっかばあが まちに きゅうにもえだした
50代以上の方はふつうに口ずさめるはず。
題名は『若葉のささやき』です。
http://www.youtube.com/watch?v=d5K6le6fzQk