2015/4/10 それは本当に面白いのか?

また雨だ…。
阪神香櫨園駅まで写真を撮りながら歩く。

   


視界を緑が侵略していく。
   


香櫨園のホームで電話がある。
きのう作ったゴルフのVTRの選手を差し替えて欲しいという。
同じコンセプトでは出来ないと返答する。
やりたくないのではなく出来ないのだ。
結局、そのままいくことになった。
グラつくなあ。
おかげで数人がバタバタと動く。
意味なかった。


夜は「あすリート」のナレーション録り。
テープ納品まで済ませて京屋で独酌。
ジョギングや筋トレの回数が減り、逆に独酌回数が増えている。
よくない傾向だ。
でも、日曜日には終わる。
よいシステムだ。


午前中に「読書マラソン」に本のレビューをアップする。
高崎卓馬「表現の技術 〜グッとくる映像にはルールがある〜」(朝日新聞出版)
曲がりなりにも映像をつくる仕事をしているのに、

この手の本を読むのは初めてかもしれない。
大学で学んだのは地理学だし、仕事を始めてからもフリーランスなので

会社で研修したりした経験はない。
著者は数々の広告賞を受賞し、映画やドラマの脚本なども手がける電通のプランナー。
本によると著者も映像表現やコピーの仕事を独学でやってきたという。
最近、毎週のように別のディレクターのつくるミニ番組を監修している。
おせっかいにも編集に手を加え、勝手に音楽をつけ、ナレ原も書き直す。
僕が暇だから介入度はかなり深い。
それを一年近く続けていると少しずつ表現の技術みたいなものは見えてくる。
それが何かを明確にしようという意識はなかったが、最近、たまたま愛読しているブログでこの本のレビューを読んだ。
「琥珀色の戯れ言」 http://d.hatena.ne.jp/fujipon/20150320


面白そうだったので例によって図書カードで購入。
映像表現の技術をわかりやすく文章化してくれている。
テレビ番組のディレクターが読んでも実戦で役立つと思う。
何より読み物として面白かった。

   


胸にズキンと突きささる指摘もあった。
たとえば、「オムニバス禁止令」
あるメッセージを伝えるために、“いい感じ” の映像を数シーンつないで同じく “いい感じ” の音楽を流す表現方法のことだ。
そのときは何となくいい気分になるが心に何も残らない雰囲気もの。
著者は100人いたら100人考える企画、すぐに退治すべきだと指摘する。


   「みんなはこういうときこう思うよ」という話より、「僕はこういときこう思った」という話のほうが強く、逆に普遍的なものになるのです。
    一般論より個人の話のほうがよほど、普遍的な力をもつのです。
    この「オムニバス菌」は、手を変え、品を買えて企画のなかに忍び込んできます。


ブログや日記が面白いと思えるのはそれが実在する個人の話だからだ。
安易なオムニバスは企画の放棄だと僕も常々思っていた。
と…本の感想をダラダラ書いていて、これはダメだと思った。
せっかく表現の技術を学んだのにまどろっこしいレビューだ。
一つ前に読んだスピーチライターの話にもあったが、つかみが肝心、
そして簡潔に、省略すべきところは省略し、起承転結は無視してよい。
不肖シオダヒロシ五十八歳、勉強します!


この本の後半で付箋を貼ったところの抜粋です。
ちなみに前半はコンテなどで実例を示したもっと具体的なお話しです。


「違和感が答えを教える」
いきなり客観的にすべてを俯瞰して表現をつくりだせる人は、

そうはいないと思います。その感覚は「違和感」です。
僕は映像の編集のときに、この最大限に活用します。
つながった映像を何度も繰り返して見る。
トップカットから順に、違和感があるところをあぶり出していく。
そして同時にその理由を考える。
そうしたら治るかを頭のなかでシミュレーションしながら、

またひたすら繰り返して見るのです。
3カット目あたりから慌ただしく感じるなら、最後の台詞をやめてみたらどうだろう。
すると少し着地が甘くなるから、そこにコピーをいれてみたらどうだろう。
逆に、冒頭にコピーを入れることで色んなことを省略できるかもしれない。
台詞をなくすと深くなるかもしれない。
そうすると得るものはなにか。失うものはなにか。


「難しいほうを選ぶ」
人と違うものをつくる。
そのために、選択肢は出来るだけ難易度の高いものを乗りこえる。
それができると表現は凡庸さから脱け出すことが出来るのです。
僕らのアイデアは、単なる設計図をつくるアイデアだけであってはいけないのです。
考えてそれを誰かに実現してもらうという「企画者顔」をしていても

おそらくそれは形になりません。
形にするための労を惜しんではいけない。
その実現にもクリエイティビティを発揮すべきです。
実際にその表現を世の中にぶつける、そのために人を口説くアイデア、
予算を効率よく使うアイデア、表現を最大化させるメディアのアイデア、考えることは山ほどあります。


「それって本当に面白い? 珍しいだけなんじゃないの?」