この顔と初めて出会ったのは1970年の夏だった。
暑い夏で、顔は生まれたてで真新しく、僕もまだ汚れを知らない中学2年だった。
あの頃、この国はライジングサンの時代、日の出の勢いで世界の先進国への階段を昇っていた。
あれから43年…この国も、この顔も、僕もうす汚れてずいぶんくたびれたな。
万博といえばこの万博だった。
大阪万博なんて呼び方は誰もしなかった。
僕は公式ガイドブックを片手に満員電車のようなエキスポ会場を精力的に歩き回った。
モノレールなんてなかったし、今高速道路が走る場所には梅田まで直通電車が通じていた。
ミニ番組の取材につきあう。
阪急夙川から十三、十三で北千里行きに乗り換えて山田で下車。
モノレールで一駅、万博記念公園で下りる。
帰りはモノレールで門真まで行き京阪電車の乗り換えて京橋まで行く。
Jリーグとプロ野球と違うところは選手とファンの距離だと思う。
サッカークラブにはの練習場からクラブハウスへ戻る導線にファンが選手とふれあえるエリアがある。
そこで話をしたり握手してもらったり写真を撮ったりサインをもらったり出来る。
遠藤や、今野や、加地や、家永や、二川らも立ち止まってファンサービスする。
阪神タイガースでは考えられない。
桜の季節が終われば緑の季節。
ときどき、ハッとするような鮮やかな緑に出会うことがある。
その季節は短く、緑色を輝かせる光線も一瞬のことだけど、
お金払ってもいいくらいの価値があると思う。
払わないけど。
夕方、明日の準備をして帰宅。
新梅田食道街の「ひょうたん」で独酌。
鶏肉のせせりの柚子胡椒焼きに「山鶴(奈良)」と「日高見(宮城)」
隣の爺さん二人の会話を盗み聞きする。
「今、日本酒がごっつ旨いんやで」
「ほうか、ワシ日本酒は吞まんで、よう知らんわ」
「ほんでも、日本酒でもエエ日本酒飲まなあかんで」
「ほうか」
「ラベルになジョウセンって書いてあるやつがええ。ホンジョウゾウっていうんわあかんわ」
「特級酒やな」
「そや、昔で言うところのな」
「ジョウセンやな、よっし」
「ここジョウセンのお酒ある?」
上撰?
お店の人 困ってました。
菊正宗の一升瓶見てたけどラベルに上撰って書いたのはなかったみたいです。