2012/2/23 旅する言葉

夜からずっと雨が降っている。
前日が曲がりなりにも(どういう意味じゃ?)仕事すると寝起きが悪い。
外界と接触するとそれなりに疲れるものだ。
14日の誕生日から毎日何らかの運動を続けている。
別にそうしようと決めたわけじゃないけど。
今日は身体が重かった。
雨降りなので休もうと思ったけど、雨降りだから頑張ってみようと変な反骨心がむくむく。
1時間限定でやってみよう。
家を出て運動して家に戻るまできっかり1時間で。
人間って変なことにチャレンジしようとする。
飽きないように日常にはちょっとした味つけが必要だ。
ポートウェーブ西宮へアプローチが5分、ロッカーで5分、ランニングマシーンで10分、
ストレッチで5分、ウエイトに10分、バイクに10分、風呂に10分、戻りに5分。
こんなんでもやらないよりマシと思うようになった。
あんまり時間ないから今日はやめとこう、が重なるとすぐに太る。
それに、あんなに寝起きで身体が重かったのに疲労が消えていた。


…ヒロのお薦め映画『ヤコブへの手紙』を観た。
wowwowで放送したものをDVDに焼いて入院のときに買ったポータブルプレーヤーで見る。
舞台はフィンランド、恩赦で出獄した元終身刑の女性レイラと盲目の牧師ヤコブの物語。

 

1970年代のフィンランド。
   恩赦を受けて12年ぶりに刑務所を出所したレイラは、

   片田舎で暮らす盲目のヤコブ牧師のもとに身を寄せることになる。
   彼女に与えられた仕事は、ヤコブのもとに毎日届く

   さまざまな人々からの悩みの手紙を朗読し、返事を代筆すること。
   心を固く閉ざしているレイラは、嫌々ながらもその仕事をこなしていたが、

   ある日ヤコブへの手紙がぴたりと届かなくなってしまう。
   第82回アカデミー賞外国語映画賞フィンランド代表で、

   「フィンランド映画祭2010」で上映された。
                                                  (web 作品情報より)

 

 


76分の短い映画。
純文学の短編小説のようなお話。
静かな読後感のような心地よい感情が心に残る。
少ない登場人物、スクリーンから発せられる清涼な空気、一枚の風景画のようなフィンランドの自然。
ゆっくりと動き、ゆっくりと話すヤコブ牧師とレイラを見ながらいつのまにか呼吸が深くなっていた。
出所した元終身刑の女性レイラが本物かと思えるほどリアル。
心にしみる映画でした。


この映画はwowwowの『W座からの招待状』という枠で放送されたもの。
イラストレーターの安西水丸さんと脚本家の小山薫堂さんが作品について語り、
言葉とイラストの1分くらいのビデオレターのようなムービーが流れる。
ヒロが言うには、全ての回がいいわけではない、らしい。
『ヤコブへの手紙』のこの招待状ムービーが素敵なのだ。
http://www.wowow.co.jp/movie/wza/

このサイトから「過去の招待状はこちら」をクリックしてご覧下さい。
水丸さんのイラストも、エッセイも、小山さんの脚本も大好きなのでこういう企画は嬉しい限り。
wowwowさんも粋なことをする。

 

   「旅する言葉」


   わたしの言葉は今頃どのへんを旅しているのでしょうか


   青い空からふりそそぐ光が眩しかったりするのでしょうか


   夕方のにわか雨に悲鳴をあげていたりするのでしょうか


   それとも無事にたどりついて、あの人に想いを伝えているのでしょうか


   旅をしているわたしの言葉は手紙と呼ばれます。


   わたしの口から発する言葉より、旅をした分だけ磨かれている気がします。


   大切な言葉には旅をさせましょう。
   大切な人のもとまで。

 

 


長く手紙を書いてない。
去年、大阪マラソンで取材させてもらった市民ランナーの人たちにDVDを送るときに便箋を添えたくらいか。
今年に入っても玉戸さんに珈琲豆を送ったときにちょっとした手紙を同封した。
ここ数年、純粋に手紙や絵はがきを書いたことはない。


安西水丸さんは今でもハガキをよく書くそうだ。
イラストにちょっとしたメッセージを添えて。(その絵はがき欲しい!)
僕はこう見えても(?)昔は年に10回以上旅をしていた時期があった。
メールも、facebookも無かった時代、僕は絵はがき魔だった。
あの絵はがきに書かれた言葉は海を渡り山を越え磨かれていったのだろうか。
絵はがきと言えば、池澤夏樹の『南の島のティオ』という短編集に「絵ハガキ屋さん」という一編があった。
受け取った人が必ず訪ねてくるという不思議な絵ハガキの話。
老後の楽しみにそんな絵はがきが10枚くらい欲しいなあ。


ヤコブ牧師はベッドの下にきっしりと手紙を保管している。
そう、手紙は決して捨てないのだ。
昔の彼、彼女からの手紙を捨てると聞くけど僕はもらった手紙は一通も捨てたことがない。
僕の出した絵はがきも捨てられずに今も誰かのベッドの下に残されているのだろうか。
旅した言葉は役目を終えてやすらかに眠っているだろうか。


…夕方から『出没!ラクゴリラ』という落語会へ行く。
雨もあがって妙に温かい中、阪神電車で梅田へ出た。
先日、ごくらく鴨セリ鍋の会でご一緒した笑福亭生喬さんとお弟子さんの生寿さんが出演する。
差し入れにアンファンのベビーシューを買っていく。
場所は太融寺の本坊2階のホール。
若い頃には太融寺界わいはよく飲みに行ったが最近はとんとご無沙汰。
関西テレビが移転してから人が少なくなって寂れた様子だ。
盛り場というのはそういう運命にあるんだね。
諸行無常。


パイプ椅子を並べた100人ほどのホール。
浪曲寄席の一心寺南会所の倍ほどの広さがある。
ほぼ満員の盛況でした。
http://rakugolira.studio-c.jp/index.html


鴨せり鍋仲間のA部さん、酒豪Nさん、K輪住職といっしょに大いに笑う。
今回は5人とも古典、それぞれに特徴があって楽しめました。
生喬さんも極楽寺で聞いたときの数倍面白い。
トリの林家花丸さんは『天神山』という30分以上の大ネタ。
三味線や太鼓、鐘の鳴りモノも入って風情がありまんな。


曾根崎の『ひさご』でおでん酒と洒落こむ。
落語のあとに熱燗でおでん、たまりませんね。
またfatfatさんに大店の旦那、いやご隠居って言われそう。
瓶ビール中を半分、熱燗2合、冷酒(春鹿)一杯。
けっこう酔いました。


A部さんが斥候となって暖簾をくぐる。
あ、そうそう酒豪Nさんの声が『カーネーション』の新山千春にクリソツだった件。


…元フォーリーブスの北公次さんの訃報。
ター坊こと青山孝が無くなったのが2009年だった。
これでフォーリーブスもビートルズと同じ2人になってしまった。
北公次は和歌山出身、体操部でオリンピックを目指すほどの選手だった。
僕が中学の時、「地球はひとつ」が流行った。


    ぼくから逃げようったってダメだよ
    逃げれば逃げるほど僕に近づくってわけ
    だって地球は丸いんだもん


   
女子が歌うと僕が呼ばれて廊下でバク転をした。
コーちゃんのおかげでつかの間 人気者になることが出来た。
感謝してます。