2011/2/15 すみたゆう!

思わず、うわあ。と声に出した。
六甲山が雪景色、何に一度あるかないか。
今朝のは格別に美しい。
いつも見かける普通の女の子が花嫁衣装を着たかのよう。

大きなサイズの写真はこちら rokko0215.JPG 直


…今日から東京出張3泊4日。
眼鏡堂さんと文楽、4月以降の営業活動も兼ねてワルダクミの打ち合わせ、
自腹出張のつもりだったけど色々と出演者打ち合わせが入って仕事になりそう。
朝8時台の新幹線(のぞみ)で上京、いや東下り。
11時過ぎに最近の常宿「ウイークリーマンション深川」にアーリーチェックイン。
錦糸町で買い物をして半蔵門線で半蔵門へ出る。


…はじめての国立劇場。
文楽公演のある小劇場は大阪の文楽劇場よりちょっと大きめな感じ。
客入りもよく賑わっている。
山川静夫さんが立ち話しているのを見かける。
ここへ来る地下鉄で読んでいた本が山川さんの『花舞台へ帰ってきた』という本。
人形使いの人間国宝 吉田蓑助さんと山川さんの交友録&闘病記。
読んでいる本の著者を直に目にすることが出来て“こいつぁ春から縁起がいい”。
いい出張になりそうだ。

 


11列31番にて見る。
文楽2月公演『菅原伝授手習鑑』@国立小劇場
去年8月に見たのは四段目の「寺入り」と「寺子屋」の場。
今回は三段目に当たる「道行」「車曳き」「茶筅酒」「喧嘩」「桜丸切腹」の場。
先月に研修生の素浄瑠璃で「東天紅」を聞いた。
文楽『菅原伝授』全段制覇を目指したい。
でも、他の段はなかなか上演されないらしい。


で、感想。
人生3度目の文楽は2度目よりさらに面白かった。
いや、マジで楽しかった。
今回は寝なかったし。
そして思った。
「寺子屋」はこれを見てから見るべきだった。
“憎まれ役”松王丸への思い入れが全く違ってくる。
この段を見ておけば、あの野辺のいろは送りは絶対泣けると思う。


やっぱり住大夫。
盆が回って登場。
満場の拍手。
大阪のような「すみたゆう!」「待ってました!」の声はなかれども客の思いは同じ。
独特の緊張感が漂う。
錦糸の三味線の音、じっと固唾を飲む。
咳払いひとつ聞こえない。
すべての視線が住大夫に注がれる。
神々しいとさえ思わせる。
「あらず戻られし」
八十六歳の悪声が舞台を支配する。
「年はとっても怖いは親、上へもあがらず犬蹲い」
そこから小一時間。
なんど鳥肌が立ったことか。
最後は桜丸を介錯する父親 白大夫の「南無阿弥陀仏」の連呼。
子の切腹を老父になりきった住大夫の魂の入った節回し。
イヤホンガイドが「桜丸を送る南無阿弥陀仏、語るは住大夫」と盛り上げる。
僕は竹本住大夫の『桜丸切腹』を生で聞いた。
一生の宝です。


住大夫師匠の写真を検索してたらこの似顔絵を見つけた。
http://blog.livedoor.jp/phone03/archives/251359.html
普通のマウスで書いたらしい。
いい味出てます。


以下、感想ツイートです。


・特に面白かったのが「車曳き」の場。
 異形の左大臣藤原時平の高笑いが圧巻でした。
 時平を語ったのは津国大夫。
 眼鏡堂氏があれは「時平の七笑(しへいのしちわらい)」として有名なのだそう。
 先日亡くなった中村富三郎がハマリ役だったそうな。


・イケメンの三味線 豊澤龍爾(りょうじ)
 ツイッターで生のつぶやきを聞いているだけに舞台での神妙な顔が可笑しい。
 http://twitter.com/#!/cresid


・大夫と三味線が始める前に床本と三味線を掲げる仕草がいい。
 時に住大夫はその所作だけで感動してしまう。

 
・三味線だけで見せる場面をメリヤスというらしい。
 (メリヤスのように伸び縮みが自由自在だから)
 今回のメリヤスで面白かったのは三つ子の嫁が食事の支度をするところ。
 桜丸の女房八重が不器用で包丁を使えない。
 大根を切っては転がしてしまうのが笑わせる。
 人形がカワイイ。
 歌舞伎の女形だったらこういうかわいさが出るだろうか?


・梅王vs松王の「喧嘩」も面白い。
 梅王丸 文司と松王丸 玉也の俵投げの妙技、しかと見た。


・白大夫を使ったのは三世桐竹勘十郎・
 イヤホンガイドで実力者と紹介されただけあってこの人は素人目にも凄い。
 さすが電通の敏腕部長。
 桜丸を使ったのは人間国宝 吉田蓑助、脳出血を乗り越えた七十六歳にも感動。
 小林稔侍似のこの人は代表取締役社長、今で言うC.E.O.
 もちろん住大夫師匠は最高顧問です。


・平安時代の社会について思う。
 当時、ドロップアウトすることは想像することも出来なかったのだと思う。
 自分の境遇から逃れることは、すなわち死か、流人のようになるか。
 だからこその悲劇だったと眼鏡堂さんに言われ納得。


…夕方、えりぼうも合流して須田町『松屋』で蕎麦酒。
その後、神楽坂の『ビター』に流れる。